世界の子宮頸がん年間罹患数は約57万人、死亡者数は約31万例となっています(参照:MSD Connect https://www.msdconnect.jp/products/gardasil-silgard9/column/epidemiology/)。
その中で、日本における子宮頸がんの発生率はどのようになっているのでしょうか。データをもとにご紹介していきます。
国立研究開発法人国立がん研究センターの調べを見ると、2019年度に子宮頸がんと新たに診断された人の数は10,879例。人口あたりの発生率(罹患率)は、16.8 例(人口10万対)となっています。
年齢階級別罹患率(2019年)を見ると、24歳までほとんど0だった罹患率が、25歳以上になると跳ね上がるのが特徴。人口10万対の罹患率は25~29歳では5.3例、30~34歳では16.2例、35~39歳では26.7例、ピークを迎える40~49歳では27.8例となります。
子宮頸がんの原因は、性交渉によるヒトパピローマウイルス(HPV)感染であるとされています。発生要因として考えられるのは、早い時期からの性交渉・早婚など。なかでも、3回以上の妊娠・分娩を経験した女性に、多く見られると言われています。
データからも分かるように、子宮頸がんが増加しているのは20~30代の女性です。この年代は、妊娠・出産を経験する女性が多く見られるのが特徴。近年では出産年齢のピークが30代前半となっており、これは子宮頸がんの発症年齢のピークとも合致しています。このような背景から、子宮頸がんはマザーキラーと呼ばれているのです。
子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染したからといってすぐに発症するわけではありません。増殖スピードはかなり遅く、浸潤がんになるまでには5~10年ほどかかると言われています。初期状態では自覚症状がほとんどなく気づくのは困難ですが、定期的に検査を受けていれば、がんになる前の状態で発見・治療を受けることが可能です。
比較的発生率は高いものの、予防や治療での制御がしやすい子宮頸がん。経済的・社会的に発展している先進国では、発生率・死亡率は減少傾向にあります。
しかし、先進国である日本はこの傾向に反していることが、Cancer誌オンライン版8月9日号に掲載された中国チームの調査で裏付けられました。
調査では、2018年度の子宮頸がん罹患率と死亡率をGLOBOCANデータベースから抽出。平均余命・GNI(国民総所得)・教育などからその国の豊かさを計る人間開発指数(HDI)との関連性を調べました。
その結果、世界の多くの国では過去10年間の子宮頸がん罹患率・死亡率がマイナスまたは横ばい状態。子宮頸がん検診プログラムを普及させている国で、その傾向はとくに顕著に見られました。
しかし、日本における2003~2012年の10年間のデータを見ると、子宮頸がんの罹患率は4.2%、死亡率0.5%。調査を行った31ヵ国の中でもっとも高い数値であり、死亡率は全体で2番目に高いという結果でした。
また、今後15年で子宮頸がんの発生率がどのように変化するかといった予測においても、他国のほとんどが減少または横ばい状態であるのに対し、日本は上昇するという結果となりました。
この結果は、日本における子宮頸がん検診とワクチン接種の普及度が問題であると考えられます。
参照:CareNet(https://www.carenet.com/news/general/carenet/52807)
ヒトパピローマウイルス(HPV)による感染が原因とされる子宮頸がんは、ワクチン接種などで予防ができる数少ないがんです。また、検診を受けることで早期発見できる可能性も高く、万が一罹患しても早期であれば手術・化学療法(抗がん剤)・放射線治療によって完治を目指すこともできます。
子宮頸がんは進行度によって治療方法が変わり、症状に合わせて適切な治療法を選ぶ必要があります。当サイトでは、末期や再発であってもあきらめないがん治療を行っているクリニック・病院をご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。