子宮がんの手術後、体に過度な負担がかかったり術後の経過が良くなかったりすると、何らかの合併症を引き起こす可能性があります。
手術の種類によっては避けられるものもありますが、手術後の生活の仕方によって引き起こされる症状もあるため注意しなくてはなりません。
本記事では、子宮がんの手術に伴う合併症の種類と症状について詳しく解説します。
腸閉塞とは、腸の炎症によって本来はくっついていないところがくっついてしまう部分的な「癒着」が起こり、腸管の通りが悪くなる状態を指します。
子宮や卵巣を手術で摘出したあとは、子宮や卵巣があった場所が空洞になります。その空いたスペースを埋めようと、近くにある直腸や大腸、小腸などの位置が移動しやすくなります。すると、腸とほかの臓器が癒着しやすくなり、結果として腸管が通りにくくなるのです。
腸閉塞は、手術から5年以上経過したあとも発生する可能性があります。腸閉塞を予防するには、術後も常に食習慣を意識することが大切です。
手術でリンパ管やリンパ節を切除したことによってリンパ液の通りが悪くなり、足や下腹部がむくむ症状です。リンパ節を切除する以外にも、放射線治療や一部の薬物療法で起こるケースがあります。
リンパ浮腫になると体に水分が溜まりやすくなるため体重増加が見られるほか、リンパ浮腫が起こった状態で感染が生じると皮膚や皮下組織に炎症を起こすことがあります。
リンパ浮腫は、子宮がんの手術後すぐになる人もいれば10年以上経過してから発症する人もいるなど、原因や発症時期が明確ではありません。確実な予防法もないため、むくみをケアしながら体重管理を継続して行うことが大切です。
適度な運動やスキンケア、リンパ液の流れを促すセルフマッサージは予防に効果があります。
子宮頸部の周囲にある組織のひとつ「基靭帯」の中には、排尿に関係する神経が走っています。この基靭帯も含めて手術で広く切除した場合、排尿障害が起こりやすくなります。
また、排便に関係する骨盤内の神経が傷つくと、排便障害が起こるリスクもあります。尿意・便意を感じにくい、いきんでも尿や便がなかなか出ない、尿漏れや頻尿などの症状が見られるでしょう。
排尿トラブルや便秘は、手術後、退院してからもしばらく続く場合があります。術後の日常生活に影響を及ぼすだけでなく、膀胱炎や腎盂炎、腸閉塞を起こすおそれもあるため注意が必要です。
卵巣欠落症状とは、卵巣を切除する手術や放射線治療によって卵巣の機能が失われると、女性ホルモンが減少して更年期障害のような症状を起こすことです。
更年期障害の症状の種類や強さ、期間はさまざまですが、手術を受ける年齢が若いほど症状が強くなると言われています。症状としては、体のほてりや発汗、食欲低下、イライラや頭痛、肩こり、不眠などが一般的です。
症状が重い場合には、ホルモン療法や漢方薬などの薬で軽減できます。辛いときは我慢せず、担当医へ相談しましょう。
尿管膣瘻や膀胱膣瘻とは、子宮がん手術の際に尿管や膀胱と膣がつながってしまい、膣から尿がもれてしまうことです。日本の子宮がん手術においては1%ほどで起こるまれな合併症ですが、万が一起きてしまうと持続的な尿もれによって、生活の質が著しく損なわれます。
手術で縫合して閉鎖する治療が一般的ですが、膣の深部で起こるものや膣が狭い場合など、手術が難しいケースもあります。
近年では、欧米を中心に腹腔鏡手術やロボット手術の実績が報告されており、難しい症例も治療できるようになってきています。
※参照元:日本産科婦人科学会雑誌(http://www.jsog-oj.jp/detailAM.php?-DB=jsog&-LAYOUT=am&-recid=33828&-action=browse)
亀田メディカルセンター (https://www.kameda.com/pr/uro/blog/2023/09/post-119.html)
子宮がんの手術後は、腸閉塞やリンパ浮腫、排尿・排便トラブル、卵巣欠落症状など、様々な合併症があると分かりました。中には、手術を必要とする重い合併症も存在します。
手術の技術向上によって合併症が発症する割合は低くなってきていますが、それでも一定の割合で起こるリスクがあることは留意しておきましょう。
しかし、医療機関では、このような術後の合併症に対する治療やケアも行われています。手術後の合併症が心配な場合や術後に気になる症状があらわれた場合は、迷わず担当医師へ相談しましょう。