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子宮体がんと卵巣がんの関連性

女性ホルモンが深くかかわり、閉経後の50~60代に多いとされる子宮体がん。しかし、最近では、妊娠・出産回数の減少により若い世代も増加傾向にあると言われています。

本ページでは、子宮体がんと卵巣がんの関連性や転移・重複のリスクについてまとめました。

子宮体がんは卵巣に転移しやすい

子宮体がんは、卵巣から分泌されるホルモン「エストロゲン」が関わっているため、卵巣に転移しやすい病気です。そのため、早期にがんが見つかっても、手術では子宮と卵管、卵巣をすべて摘出するのが原則とされています。

ただ、早期にがんを発見できた場合、開腹手術よりも身体的負担が軽い腹腔鏡手術が行われることがほとんどです。

卵巣がんとは

卵巣がんとは、子宮の左右にあり、女性ホルモンを分泌したり周期的に排卵したりする「卵巣」という臓器に発生するがんのことです。卵巣がんの大半は卵巣の表面を覆う膜から発生します。卵巣は通常、2~3cmほどの大きさですが、腫瘍になると30cmを超えるものもあります。

卵巣はもともと腫瘍ができやすい臓器といわれており、腫瘍には良性と悪性がありますが、悪性の腫瘍が周囲に浸潤して転移すると、卵巣がんとなります。

卵巣がんの症状

卵巣がんは、初期のうちの自覚症状はほとんどありません。進行すると、下腹部の張りや圧迫感、傷み、しこりなどがあらわれます。

しかし、下腹部の張りを「太った」と考える女性もいて、見逃してしまうケースも多く見られます。「食べていないのにお腹が出ている気がする」「お腹が張ってトイレに行きたくなるけれど尿は出ない」などの症状があらわれた場合、注意が必要です。

卵巣がんと子宮内膜症の関連性

卵巣がんの患者のうち、約半数の方が子宮内膜症を基礎疾患としています。子宮内膜症のうち、特に注意すべきなのがチョコレート嚢胞です。

卵巣に子宮内膜症が発生し、古い月経血が卵巣に溜まって膨れると「チョコレート嚢胞」となります。このチョコレート嚢胞が卵巣がんを引き起こす原因になるといわれています。そのため、子宮内膜症と診断されると、早期にがん発見できるよう綿密な経過観察が行われます。

子宮体がんと卵巣がんは重複する?

比較的まれなケースですが、卵巣がんの3~10%に子宮体がんが、子宮体がんの5%に卵巣がんが重複すると言われています。重複が多く見られる年代は閉経前や若年が多く、特に子宮体がんの組織型でもっとも多い類内膜腺がんに多いとされています。よって、子宮体がんと卵巣がんが重複する可能性はゼロではありません。

たとえ診断時には重複していなくてもがんが転移する可能性はあるため、子宮体がんが見つかったら卵巣も手術で摘出するのが原則です。

※参照元:秋田大学大学院医学系研究科(PDF)(chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.med.akita-u.ac.jp/~obgyn/59th/program03.pdf

子宮体がん治療で卵巣を温存できる場合もある

子宮体がんの治療では原則的に子宮や卵巣・卵管を摘出しますが、一定の条件を満たした場合には、子宮や卵巣・卵管を残し、将来の妊娠の可能性を残すことができます。これを「妊孕性温存治療」といいます。

ただし、妊孕性温存治療を検討するにしても、卵巣や卵管・その他の臓器への転移や再発など、様々なリスクを考慮しなくてはなりません。また、がんの進行度合によっては妊孕性温存治療ができない場合もあります。

将来の妊娠や出産を強く望んでいる方は、自分の希望を担当医師に伝え、よく相談しながら治療法を選択していく必要があります。

子宮体がんと妊孕性温存治療の選択肢について

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