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子宮体がんと子宮内膜症の関連性

子宮体がんは「子宮内膜がん」とも呼ばれることから、子宮内膜症になると子宮体がんに進行してしまうのではないか?と考えてしまう方がいます。

不安にならないためには、子宮内膜症に関する正しい知識を備えておくことが大切です。子宮内膜症と子宮体がんの関連性について解説します。

子宮内膜症は子宮体がんのリスクを高める?

子宮体がんは、別名「子宮内膜がん」とも呼ばれます。そのため、子宮内膜症になると「そのうち子宮体がんに進行してしまうのではないか」と不安になってしまう人がいますが、両者は異なる病気です

子宮内膜症は、子宮の内面を覆っている組織が、何らかの原因で卵巣や腹膜などの他の場所に発生するものです。それに対し子宮体がんは、子宮体部の内側にある子宮内膜からがんが発生します。よって、子宮内膜症と子宮体がんに直接的な関連性は低いと考えられています。

ただし、子宮内膜症が別のがんに進行していく可能性は否定できません。子宮内膜症が卵巣にできる「チョコレート嚢胞」は、卵巣がんの原因となる場合があります。

子宮内膜増殖症における子宮体がんのリスク

子宮内膜症と似たような名前の病気に「子宮内膜増殖症」があります。子宮内膜症とは別の子宮の病気のひとつですが、子宮内膜増殖症は子宮体がんに進行するリスクがあるため注意が必要です。

子宮内膜増殖症は、正常細胞とは形態の異なる「異型細胞」の有無によって2つに分類されます。異型細胞を持たない子宮内膜増殖症の場合であれば、ほとんどが自然に消えてしまいますが、異型細胞をもつ「子宮内膜異型増殖症」の場合、約20%の確率で子宮体がんに進行するといわれています。

子宮内膜症ではなく「子宮内膜増殖症」と診断されたら、婦人科で詳しい検査を受け、医師の指導のもと適切な治療を受けることが大切です。

※参照元:中外製薬 おしえて子宮体がんのコト「子宮体がん みんなのQ&A」 (https://oshiete-gan.jp/gynecologic/uterinecorpus_cancer/qa/

子宮内膜症と診断されたら

子宮内膜症は、ときに不妊の原因にもなります。子宮内膜症と診断されたら、年齢や症状の程度、将来の妊娠希望などを考慮して、医師と相談しながら最適な治療を選択しましょう。子宮内膜症の主な治療には「薬物療法」と「手術療法」の2つがあります。

薬物療法

薬物療法には、痛みを抑えるための対症療法と、病気の悪化を防ぎ、病変を小さくするホルモン療法の2つがあります。

痛みに対しては、主に鎮痛剤を使用し、時には漢方を用います。ホルモン療法では、女性ホルモンの分泌を一時的に抑制して、閉経したかのような状態をつくりだします。病巣の増大を抑える効果はありますが、副作用として更年期症状が見られます。骨粗しょう症のリスクも高まることから、半年間という期間限定で行われる治療です。

また、治療を中止すると、病変が元の大きさに戻ってしまうことがあります。そのため、手術前や閉経までの「つなぎ」として多く行われる治療法です。

手術療法

子宮内膜症の手術療法には、温存手術と根治手術の2種類があります。どちらも病変部を切除する治療ですが、切除・摘出する範囲に違いがあります。

できる限り病変を摘出しつつ、将来の妊娠のために子宮や卵巣を温存するのが温存手術です。

それに対し根治手術は、子宮または卵巣や卵管などの付属する器官をすべて摘出し、再発を予防します。正常な部位は温存することもできますが、温存した場合、多くのケースで再発予防のためにホルモン療法が併用されます。

定期的な子宮体がん検診を

子宮内膜症は子宮体がんになるリスクは低いものの、卵巣にできると別のがんに進行するリスクがあります。また、子宮内膜症に似た名前の「子宮内膜増殖症」という病気は、無症状のまま進行してしまうと子宮体がんになる可能性があります。

子宮内膜症のみならず、子宮の病気をがんに進行させないためには、早期発見と早めの治療が大切です。自覚症状が出ていなくても、定期的な子宮体がん検診を受けるようにしましょう。

不正出血やおりものの異常は、子宮に関する病気のサインの可能性があります。痛みのないちょっとした体の変化も「ホルモンバランスの乱れ」などと自己判断せず、なるべく早めに婦人科を受診するようにしてください。

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